浅野仁(あさの ひとし)
東京銀座、代々医師の家系に生まれる。実家近くの、祖父、旧勤務先・聖路加病院にはハモンドオルガンが設置されており、ごく自然とオルガンに親しむ。
父の診療所は日比谷・日活国際会館ビル内に在り、外国人患者も多く、幼少より、英語・洋楽に接する。日常、自宅の電気蓄音機からは父・愛好のクラシック、ラヂオからは駐留軍放送の軽音楽が流れ、その結果、主に米国系音楽より影響を受ける。
当時、ハモンドオルガンは稀少楽器、教授陣も不在につき、FENで放送される音楽、父のレコードコレクションを頼りに、すべて耳から独習にて独自のオルガン奏法を修める。
小学校以来在籍の慶應義塾在学中、ハモンドオルガン・プロフェッショナル演奏家として活動を開始、現在に至る。
International Hammond X-66 Club 初の日本人会員として Cancun International X-66 Convention に定期出席、世界各国から来訪のメンバーと交誼を深めるなど、国際交流を積極的に推進している。
日本人初の海外音楽留学生として、帝政ロシア・ペテルスブルク帝室音楽院に留学(明治24年~26年)、帰朝後、「慶應義塾初代塾歌」ほか多数の作品を作曲、併せて、神田ニコライ堂・大聖堂指揮者として活動した音楽家「金須 嘉之進」は曽祖父にあたる。
主な活動
【一般演奏】
ジャズクラブ、会員制クラブ、プライヴェートパーティ等の演奏に加えジャズ祭へゲスト出演他、多岐に亘る。
【コンサート】
浜松市楽器博物館・NHKホール・銀座BRB・祖師堂など各所にて。
【ホテルにおける、ディナーショー、パーティへの出演・主催など】
ホテルオークラ・川奈ホテル・フェヤモントホテル・旧パレスホテル ほか多数。
【スタジオの主宰】
ジャズ理論を含め、ハモンドオルガン奏法の個人指導を自宅スタジオにて主宰。
【学術協力】
東京電力「電気の資料館」における企画展へ映像・演奏記録提供、配布用冊子文面校正。浜松市楽器博物館宛、オルガン・スピーカー他を寄贈し、同館の楽器コレクション充実・保存に協力。
【鑑定活動】
テレヴィ東京・何でも鑑定団におけるハモンドオルガン鑑定など。
ハモンドオルガンとは
1930年代半ば、米国人発明家、ローレンス・ハモンド氏により合衆国・シカゴで発表・発売された電気式オルガン。
特殊な歯車群(トーンホイールと呼ばれる)により創音、主として真空管式アンプリファイアーを経由し、専用スピーカーから楽音を発する、電気式オルガン。
パイプオルガン(風琴類)・電子オルガンとは全く異なる、独自のポジションを占める楽器である。
音色は深く穏やか、耳からだけではなく全身で楽音を聴くこととなるため、豊かで暖かい雰囲気が楽しめる。
発売以来、楽器価格が高価であったため、初期の個人顧客はヘンリー・フォードなど当時の名士が多数を占めた。
この傾向は、1960年代半ばに発売された「X-66型ハモンドオルガン」まで引き継がれる。
個人顧客に加え公共施設用納品も活発で、多くの教会・放送局・野球場・スケート場・高級ホテルなどが購入、また、米軍備品としても採用された結果、軍用ハモンドオルガン(モデルG)も存在した。
戦後、軍放出品、プリオウンド・ハモンドなどが市場に現れると、戦前に較べ、比較的少ない予算で楽器を入手できる機会も生じた。
その結果、アフリカン・アメリカン演奏家によるモダンジャズへの導入(ジミイ・スミス氏他)、ゴスペル関連施設でのハモンドオルガン購入・演奏なども可能になったのであろう。
ハモンドオルガンが、主として黒人音楽と共に普及したという日本等での認識は全くの誤解であり、発売以来、裕福なクラスの白人社会にて受け入れられてきた楽器という現実を思い起こす必要がある。
加えて、ハモンドをはじめとするハイクラスなオルガンを個人的に所有できるということは、米国社会におけるステイタスの象徴であったことも理解しなくてはならない。
1970年代半ば、トーンホイール方式のハモンドオルガンは、製造中止となる。
我が国には戦前、キリスト教系病院・学校・教会などを中心にNHK放送局にも設置されたが、高価であった為、自家用ハモンドオルガンの普及は難しかったようである。
戦後、米軍撤退時、軍用ハモンドオルガンが各施設に寄贈されるなど、戦前と比べ目に触れる機会も増えてきたが、価格は依然として高価であり、個人所有(作曲家・古関 裕而氏が、新品の自家用ハモンドオルガンを昭和26年に購入した件は、例外中の例外である)は限られていた。
現況、日本国内に残るコンディションの良いハモンドオルガンは、残念ながら極めて少ない。
旧トーンホイール方式ハモンドオルガン製造中止後、同機はデジタル方式により製造が続行されており、デジタル機特色のひとつである分解・組み立て並びに可搬性の容易さから搬入可能な演奏会場が増え、心強い。
浅野 仁 レパートリー
レパートリーの多くは、 Standard Song ・ Torch Song ・ Latin American Musicである。
穏やかな雰囲気のソサエティ&キャバレイ・ジャズが主体(本邦で一般的な,バップ系モダンジャズとは異なる世界)
Society Jazz Music の性質上、「社交」本来の意味における社交ダンス(競技ダンスではなく)にも適した演奏。
曲目は、1920年代頃から60年代頃にかけ、主として北米、中・南米で発表された、スタンダード曲、すなわち良い歌詞・良いメロディーに恵まれた時代の作品が、大半を占める。